大判例

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横浜家庭裁判所横須賀支部 昭和29年(家イ)81号 審判

本籍 愛媛県○○○郡○○町

住所 横須賀市○○○

申立人 藤田美子(仮名)

国籍 中華民国山東省

住所 横須賀市○○町

相手方 金日東(仮名)

主文

申立人と相手方との間において昭和二十五年三月十六日神戸市○○区長に対する届出によつてなした婚姻が無効であることを確認する。

事実

申立人は主文と同趣旨の合意に基き右合意に相当する審判を求め、その申立の実情として次のとおり陳述した。

申立人は昭和二十三年暮東京の中華民国○○会館に勤務中神戸から事業の関係で同会館に出入りしていた中華民国人である相手方と知り合い同年○月○○日頃から神戸市○○区○町○丁目○番地で相手方と同棲し肉体関係を結んでおる内相手方の胤を宿し昭和二十五年○月○日神戸市○○区所在の○○産院にて長男正一を分娩した。

相手方はその当時仕事の関係で不在勝であり申立人は出産した正一の将来を考え相手方とは同棲し事実上夫婦関係を継続していたところから相手方は申立人との正式婚姻を承認しているものと誤信し相手方と婚姻するため勝手に相手方の氏名を代署してその名下に押印しかつ申立外季世福、金連徳を証人とする申立人と相手方との間の婚姻届書を作成し昭和二十五年○月○○日神戸市○○区長に提出してこれが届出を了したものである。

然るに相手方は後日右婚姻の届出を知り申立人と婚姻する意思がないのに不法にも相手方不知の間になした該婚姻届は当然無効であり承認することはできぬと主張し数年以前より申立人と同居せず殆んど申立人及び正一の生活扶助もしないので申立人は女手ひとりで困苦のうちに右正一を養育し今日に至つた。

よつて申立人は相手方に対し申立人と相手方とが昭和二十五年○月○○日神戸市○○区長に対する前記届出により為した婚姻は当事者の一方である相手方に婚姻する意思がなくまた当事者双方からの真実の届出もなかつたもので婚姻は成立しなかつたものであるからこれが無効の確認を求めるため本申立に及んだ。

証拠として甲第一号(戸籍謄本)第二号(婚姻届)各証を提出し申立人藤田美子(第一、二回)相手方金日東の各本人尋問の結果を援用した。

相手方金日東は右と同趣旨の実情を述べた。

理由

当家庭裁判所の調停委員会の調停において当事者間に主文と同趣旨の合意に基き右合意に相当する事情の合意が成立しており、これに当裁判所が真成に成立したと認める甲第一第二号証と申立人藤田美子(第一回、二回)相手方金日東の各本人尋問の結果を併せ考えると申立人の申立た前掲事実はすべてこれを肯認しうべく、従つて申立人と相手との間に昭和二十五年○月○○日神戸市○○区長に対する届出によつて為されている婚姻は夫である相手方が申立人と婚姻する意思がなく当事者間に合意がなかつたことになるから当事者一方の申立人の本国法たる日本国民法の実質的成立要件を欠缺し、相手方の本国法たる中華民国法の効力如何にかかわらず無効であること明かであるのみならず、当事者双方からの真実の届出でなかつたのであるから形式的成立要件の欠缺としても挙行地法としての日本国法が準拠せられて成立しなかつたことになる。

よつて申立人が相手方に対し右の事由に基き形式的に成立した外形を備えている本件婚姻の無効であることの確認を求める本申立は理由があるとして認容せられるべく家事審判法第二十三条法例第十三条に則り主文のとおり審判する。

(家事審判官 石原辰次郎)

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